#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
息吹と洗面所で別れ、美聖はダイニングテーブルに向かい合わせで朝食を並べる。
息吹はデビューしてから朝ごはんという概念が抜け落ちていたらしく、美聖が用意する朝食にいつも笑顔を見せてくれる。
「わー!だし巻き玉子!やったー」
先程まで「んー」しか言わなかった女の子はもういない。朝のスキンケアを終えた息吹は、外出用のラフな格好に着替えて自分の席に着く。
息吹は美聖と暮らすようになってから、ふたりで過ごす朝は必ず朝食を取るようになった。その後、お昼や夜は自分で厳しく制限しているようだが、美聖の作ったご飯はきちんと食べる。
「いただきます」
「いただきますっ」
ふたりで手を合わせて温かな湯気の立つ朝ごはんを口に運ぶ。本当に何気ない、ささやかなこの時間が、美聖も息吹も好きだった。