#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
美聖は、その眉間に、とん、と人差し指を当てる。息吹が驚いて見上げた先で、砕けたように笑って告げる。
「息吹さんは何してても可愛いよ」
「、」
「今も。カメラがなくても、綺麗な衣装がなくても、メイクしてなくても、可愛い」
美聖の言葉に、息吹は慌てて玄関の扉へと身体を向ける。そうして、背中越しに美聖へ呟く。
「美聖くんってずるい」
そう言って振り返った息吹は悔しそうに唇を尖らせて、猫のように大きな瞳で美聖を睨みつけると。
「きゅんとした」
なんて言うや否や「いってきます」と慌ただしく家を出ていった。
「へ……?」
美聖は息吹がいなくなった扉を見つめ、そのままずるずると壁越しに倒れ込んだ。