#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
ホテルで明日の予定を確認しつつ、片平は美聖に言う。
「美聖さんってやっぱり聖人だったりします?」
「26だもん。立派な成人だよ」
「そっちじゃないです」
片平の溜息に美聖はくすくすと笑う。息吹のこと以外は本当にこの人は非の打ち所がないのだ。だから、神は美聖に息吹という存在を与えたのだろうか。
美聖は笑みを浮かべたまま、少しだけ困ったように眉を下げる。その弱った顔が老若男女受けが良いことを本人だけが知らない。
「聖人なんかじゃないよ。息吹さんが毎日毎秒可愛くて依存性になってるもん」
「……病院あるといいですね」
「うん」
片平は日々、彼に対する尊敬を一言で一蹴されたことに破顔しながらも、これでこそ柊 美聖なんだよなと不覚にも納得してしまった。
「今日だって理々杏《あの子》が息吹さんだったらって思うと居ても立ってもいられなかっただけだし」
「(巡り巡って美聖ファンが増えてるんですけどね)」
事務所の人間として美聖と息吹の同居には反対し続けなければならない。だが、片平はどうしても美聖の一ファンとして、彼を応援してしまうのだ。