#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
アイドルとおかえり
美聖の撮影は総合的に数日押した。そしてその間に息吹はツアーへと行ってしまい、今度は美聖が海外ロケで家を空ける。
その繰り返しの末、ふたりが会えたのは息吹のキュン発言から2週間後のことだった。
〈今から帰ります〉
多忙なふたりにとってはあっという間にも感じられる時間だが、入道雲は日に日に存在を消し、セミの鳴き声も全盛期よりも落ち着き、早いところでは緑の葉に色が付き始める、そんな時間の流れだった。
〈先にお家にいます。気をつけて帰ってきてね〉
「ふぐぅうッ……!」
「美聖さんいきなり奇声発するのやめてもらっていいですか。運転怖いんで」
「ごめんつい」
「("つい"で人は奇声を発しない)」
ずっとスマホで連絡は取り合っていた。それでもお互いに忙しない。息吹はツアー中ということもあり、長時間スマホに触れないなんてザラだった。