#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化






「お疲れ様」



息吹は美聖と同じ目線になるよう、しゃがみこむ。彼女だって疲れてすぐ眠りたかっただろうに、美聖の帰りを笑顔で待っていてくれた。



そう思うと、美聖は今まで会えなかった分が一気に切なさとして込み上げてくる。




「息吹さん」

「ん? う、わ、」



美聖は息吹の手を掴み、ぐっと引き寄せる。そのまま自分の身体の中に彼女を閉じ込める。


会えなかった2週間の間に、美聖は撮影で理々杏のことも、他の女優のこともこうして抱きしめるシーンがあった。その時は、心の内側は穏やかな小川が流れる感じだったのに。




「美聖くん……?」




今は息吹に自分の心臓の音がバレてしまわないかと思うほど、激しい。


小川など美聖の内側にはどこにもなく、ダムを決壊した濁流が激しく流れ込むばかり。


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