#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化





それなのに、恥ずかしいのに、ずっとこうしていたい。そんな気持ちが勝る。




「美聖くん、お風呂沸いてるよ。今日は早く休もう」

「息吹さん」




離れようとする息吹をさらにギュ、と抱きしめる。離れたくないと思っているのが、こうしていたいと思っているのが、美聖だけだというのが、なぜだかとても寂しい。


息吹も同じ気持ちだったらいいのに、と願ってしまう。




「息吹さん、"おかえり"ってもう一回言って欲しい」




美聖はそう言いながら、すり、と息吹の頭に擦り寄る。彼女の髪から仄かに香るのは美聖と同じ。それなのに、やっぱり息吹が身に纏うだけで、数段甘く優しく良いものになる。




「家に帰ってきて息吹さんに「おかえり」って言ってもらえるシチュエーション、今まで何千回も考えたことあるんだ」

「……何千回」

「ごめん。本当は何万回」

「あ、うん。訂正しなくて大丈夫」




息吹の突っ込みに、美聖は息吹の頭に擦り寄せる頭をぐりぐりと左右に揺らす。


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