#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
瑞希も息吹へと身体ごと向け、こそ、と耳打ちするように言う。
「柊くんの前だと息吹がただの女の子みたいで可愛いなあってこと」
息吹は驚いたように目を見開いてから、慌てて口を開く。その黒目は困惑を表したように泳いでいる。
「そ、そんなことないよ」
「そっか。瑞希お姉さんの見間違いかあ。残念」
「もう、からかわないでよ」
「ごめんごめん」
息吹が恥ずかしそうに瑞希の肩にもたれかかる。瑞希はけらけら笑うだけ。そんなふたりのもとにcoc9tailのメンバーもやってきて、楽しげに混ざる。
みんないつも通りに笑っている。まるでこれがcoc9tailとして最後のアルバムになることなど知らないように。でもみんな心のどこかできちんとわかっている。それでもいつも通り笑っているのだ。
「今日も頑張ろうね」
楽しそうに瑞希へ寄りかかるメンバーに、瑞希はいつも通り笑いながら言った。