#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「……はあ……ふー…よし」
息吹は疲労を隠すようにして気合いを入れ直す。
天性の美しさもセンスもある。それでもなお彼女は、誰よりも努力を惜しまない。
ファンの前では常に笑顔で余裕のある息吹の裏側は、傷だらけの少女だ。
木村は居てもたってもいられず、ガラス張りの扉を開ける。集中しきっている息吹は気がつかない。
「息吹、帰るよ。」
木村の声に息吹が振り返る。
鏡を見つめてプロの表情になっていた彼女が、驚いたように木村を見て、そして、花が咲くように笑う。