#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
彼女は登場時と変わらぬ美しさを保った笑顔のまま、会場に手を振りながら、ゆっくりと見つめていく。スクリーンに大きく映る息吹の顔が美し過ぎて時が止まる。
手を振り終えた息吹は無言で頭を深く下げる。10秒ほど頭を下げ続けた息吹の、その行動で、彼女の誠心誠意がファンの胸に伝わってくる。
息吹は言葉数が多くない。けれど、ファンは彼女のひとつひとつの行動に愛を感じるのだ。
顔を上げた息吹は紫のマイクを口元へ近づけ、女神のような微笑のまま口を開く。
「みなさんが私をアイドルにしてくれました。」
永遠に泣き続けていた美聖の瞳から熱く濡れた大粒の涙がさらに溢れ出す。