#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
黒のバケットハットを深く被り、黒いマスクで変装した息吹は外へ出るとすぐにスマホを取り出し、画面を操作すると耳に当てる。
「、」
美聖のコートのポケットに入れていたスマホが震える。
確認しなくてもきっと息吹からだ。それでも確認してしまうのは、目視でその現実を見つめて喜びたい美聖がいるからだ。
【着信】 黛 息吹(女神様)
美聖はその電話に出ることなくコートのポケットにスマホを仕舞うと、口の横に両手を当てた。
「息吹!」
美聖の声に、息吹がはっとしたように顔を上げ、それから声のした方を辿り、美聖を見つける。