#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「本当はいつも甘い気分なの。我慢してただけ」
「そっか」
湯気の立つコーヒーに注がれたミルクと砂糖が、ゆるりと混ざり、その色を柔らかくする。
息吹はそれを口元に寄せて、ふう、と冷ますように息を吹きかけてから、美聖に呟く。
「でももう私は我慢しなくていいみたいだから」
いたずらに零された言葉は、砂糖よりも甘い響きを持っていて、美聖ははにかみながら「うん」と頷いてみせた。
コーヒーをふたつ手に、先にリビングへと消えた息吹の後を追うように、美聖は息吹の分のホットタオルを手に、彼女のもとへ向かう。
息吹はベランダでコーヒーを飲んでいた。美聖はブランケットを持ってベランダに出る。