#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
デビュー前からcoc9tailが暮らす事務所所有のマンションへ、車を走らせる。
息吹はスモークガラスの向こうの景色を眺めている。
真っ白な肌は陶器のように美しく、高く小さな鼻に、ふっくらとした柔らかな唇。そして何よりもその大きくて力強い黒目がちの瞳が、彼女の魅力だ。
長くカーブした睫毛の下、暗闇の中でも輝きを失わない瞳は、ときどき、とても泣きそうな色になる。
「(彼女は、いいのだろうか。)」
coc9tailの解散は、木村にとっても突然だった。
事務所の上層部と彼女たちだけで密かに進められていた話らしく、決定が下ってから木村には解散が告げられたのだ。──とある秘密と共に。
「息吹」
赤信号になって車を止めたところで、バックミラー越しに彼女を見る。