#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「そう思うと美聖ってやっぱすごくない?」
「すごい?」
「だって記事の写真で息吹泣いてたらしいじゃん」
「待ってたしかに」
息吹は綺麗な涙を零しながら、最後はやっぱり笑顔でファンに向けて「ありがとう」と告げた。そこでまた私たちの涙は滝へと量を変えた。
ひとりがティッシュで鼻をかみながら、「でもさ」と声のトーンを下げる。それは、みんながみんな感じていたこと。
「……美聖、いなかったね。」
毎年、客席でカメラに抜かれる美しい男は、本日一度もカメラに映し出されることはなかった。