#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化





息吹は窓の向こうを見つめていた顔を木村へ見せる。毎日観ても飽きることのない美しさ。




「ん?」




口元に笑みを浮かべたまま息吹が小首を傾げる。艶やかな黒髪がさらりと揺れる。




「息吹はいいの?」



木村の一言に、察しのいい彼女は、すぐに何の話か悟る。だが、柔らかな笑みは変わらない。


変化がないからこそ、木村の方が心配になるのだ。



美しいものは、いつ消えてしまうのかと時々どうしようもなく不安にさせるものがある。




「何も完全に芸能界を引退する必要はないと思うわ。もちろん息吹の意思を尊重するけど、誰よりもアイドルの素質があるのに」



息吹の視線が、少しだけ伏せられる。長い睫毛が白い頬に影を注す。



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