#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
本当はもう少しどやしてやりたかったが、子犬のような美聖を見たらもう何も言えなくなってしまう。
ふたりで現場に戻る。すると美聖と同じダウンコートを着てキョロキョロしていた翠《みどり》が、嬉しそうにふたりへ手を振る。いや、美聖にだ。
「柊さんっ!どこにいたんですか?めちゃくちゃ探したんですよー」
「ごめんね」
美聖は柔らかく微笑む。目尻にシワのできるその笑みは、女性キラーで有名だ。
翠も案の定、美聖の微笑みに胸をつかれたようで「ううん、全然」と頬を赤らめる。
「柊さんの差し入れのコーヒー凄く美味しいです。ご馳走様です」
「喜んでもらえてよかったです」
和やかな雰囲気に、片平はホッとしながらふたりから少しだけ距離を置く。
マネージャーにしては近すぎる距離かもしれないが、気付かぬうちに美聖にまた自販機になられたら困るので致し方ない。