#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化





美聖は、震える手と一瞬止まった心臓を整えるために深くなるべく大きく深呼吸をする。



そして、微かに震えを残す手のひらを、周音の方へ差し出した。




「とても嬉しいですが、これは、受け取れません……」

「え?どうして?あ、ファン乗り換えたの?息吹はもう最推しじゃない感じ?」

「一生推しです。いや死んでも推しです。こんな、こんな、もしかしたら息吹さんのDNA (デオキシリボ核酸)が検出されるかもしれない宝をッ……でも、っく、だ、だからこそ、これは、貰えません」

「……(噂以上のガチファンなんだな。実は名前売るためのキャラ作りかもとか思っててごめん)」

「これが闇のオークションとかで出回りかけたら全財産掛けてでも手に入れますけど、でもこんな、一人勝ちはやっぱりずるいというか、」

「……(ずっとシュシュ見て喋ってる)」



キョトンとする周音に、美聖は本当は喉から手が出て内蔵も出て、なんなら脳みそを出し切っても欲しい息吹のシュシュを、周音の手に戻しながら言う。





「非公式でこれを受け取っちゃったら、俺は、そのファン失格になるような気がして」




美聖の歯切れの悪さはやっぱり欲しいという欲があるからだ。それでも、言ってしまえばもう引き返せない。



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