#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化





「もしかして、の可能性も潰せずにいるから、今日"直接"確かめにきたんだ」





周音の中には、複数の人格の型が存在している。

ひとつの身体に、自由自在に、その時必要な中身を出し入れできる。



周音が右足の裏で壁を軽く蹴る。


その反動で彼の身体が壁から離れる。


革靴の先が、美聖へ向く。


美聖は、たったそれだけ貫かれた気分になる。




「もしかして、"噂"って、息吹で、その相手って、」




周音が美聖との距離を詰める。


真正面から瞳を射抜かれて、美聖は、必死に見つめ返す。逸らしてはならないと、本能が告げていた。



彼の白い指が、白い蚕の糸のように、するり、と、美聖の細く長い首に這う。


指が肌に吸い付き、首に浮き出た血管から潰すように、その指が微かに力を込める。





< 89 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop