#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
その花が綻ぶ刹那に見せる蕾に似た息吹の唇を、美聖は見下ろす。
眺める先に映る息吹は、何よりも美聖の気持ちを揺るがす。
───じゃあね、"ただの息吹のファン"
周音の言葉を思い出す。胸の側面に、引っ掻き傷のような痛みが走る。
息吹の甘い唇が美聖を誘う。無垢で力強い瞳が、美聖を見つめる。彼女の髪が動きに合わせて揺れる。
「(……ただのファンでいなきゃ、だめだろ。)」
だって、彼女にとって、俺は、"ただのファン"なのだから。