#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
美聖は無言のまま息吹の唇にひっかかる髪を指先で払い、その髪を頬の輪郭をなぞるように掬いあげ、大ぶりなピアスのついた耳にかける。
少し驚いたように、息吹の大きな瞳がさらに見開かれる。黒真珠を埋め込まれた瞳は、溜息をつくほど美しい。
美聖は、彼女の髪を耳にかけたその指を、そのまま髪の隙間に通らせる。
毛先に流れていくにつれて、緩く巻かれた髪は、美聖の指が通るところだけ真っ直ぐになっては、またすぐに元に戻る。
その美しい曲線を見下ろしたまま、美聖は口を開いた。
「俺は、貴女に出逢えてよかった。」
「、」
「息吹さんを好きでよかった。」