#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化






"ただのファン"である美聖が息吹に言えることは、彼女を引き止めることでも、困らせることでもない。ただ、ただ、好きでいることだ。



優しく真っ直ぐと紡がれた美聖の言葉に、息吹の動きがわずかに止まる。




たとえば美聖が今すぐにでも息吹の腕を引いて自分の胸の中へ閉じ込めて、華奢な身体を包み込みように抱きしめて。





『俺以外と結婚するなよ』




なんて言えるとしたら、それはフィクションだ。美聖は演じる側であっても、別世界での話。



息吹が美聖を見上げ、その力強い瞳の奥をわずかに揺らし、唇を開きかける。



息吹の髪を梳いていた美聖は、彼女の唇の動きに気がつくはずもなく、彼女よりも先に口を開いた。




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