#推しが幸せならOKです@10/15富士見L文庫から書籍化
「貴女の"ファン"でよかった。」
「……」
空気が揺れる。
美聖が手にしていた紙袋に追い打ちをかけるように、ドン、と息吹の細い手がそれを叩くように押し出す。
それに驚いて美聖が息吹を見る。
彼女は一歩下がり、ひとりでしっかりと立って、美聖と対峙するように瞳の色を強める。
「"ファン"の美聖さんに訊いてみたいことがあったの」
息吹は、今まで美聖が指を通していた髪を鬱陶しそうに後ろへ流すと、完璧な笑みで美聖を見据える。
「……はい。俺でよければ」
華奢な身体から絶大なオーラが放たれている。
それは先程まで美聖とのやり取りに頬を膨らませる彼女は面影もない。