好きとか愛とか
壱矢の額が離れ、それが名残惜しいと思っている理由も分かればいいなと思った。
「言っとくけど、断ってるからお前に彼女頼んでんだぞ?」
「彼女役です」
「そーかよ」
そこで一旦話が終わり、また沈黙が落ちた。
でもさっきまでの沈黙とは違って、和やかな空気が流れている。
すると、その空気を分断するように、壱矢のスマホが着信を伝えてなり始めた。
「ちょっとごめん」
お尻のポケットからスマホを取り、画面を観て眉を寄せる。
見覚えがないのか、怪訝な顔をしていた。
「はい」
対応する声からも、警戒心が窺える。
だが、挨拶を交わした直後、電話の相手が誰なのか判明したらしくいつもの声に戻っていた。
「あ、どうも先日はお世話になりました。はい、大丈夫です。………はい、……え、本当ですか?はい、ええ」
敬語混じりの丁寧な対応は、相手か自分より目上であることを示している。
途中壱矢の目が見開いて、なぜか私の方を凝視した。
私の顔を観て、相手と話をしている。
共通の知り合いかと思って首をかしげた時、壱矢が私の手をぎゅっと強く握りしめた。
「ちょっと待っていただけますか?今一緒にいるので確認します」
声の感じと雰囲気が、壱矢の緊張を物語っている。
壱矢と私の共通て、こんなふうに張り詰めた空気になることなんて一つしかない。
心臓が嫌な音を立てて脈を打ち始めた。
「壱?」
手を離し、私の肩を抱き寄せる。
落ち着かせるためなのか、幼い子をあやす仕草で私の背中を撫でていく。
「犯人らしき男が捕まった」
耳元に唇を寄せ、すごく落ち着いたトーンで告げられた事実に、全身が毛穴を膨らませるのか分かる。
「言っとくけど、断ってるからお前に彼女頼んでんだぞ?」
「彼女役です」
「そーかよ」
そこで一旦話が終わり、また沈黙が落ちた。
でもさっきまでの沈黙とは違って、和やかな空気が流れている。
すると、その空気を分断するように、壱矢のスマホが着信を伝えてなり始めた。
「ちょっとごめん」
お尻のポケットからスマホを取り、画面を観て眉を寄せる。
見覚えがないのか、怪訝な顔をしていた。
「はい」
対応する声からも、警戒心が窺える。
だが、挨拶を交わした直後、電話の相手が誰なのか判明したらしくいつもの声に戻っていた。
「あ、どうも先日はお世話になりました。はい、大丈夫です。………はい、……え、本当ですか?はい、ええ」
敬語混じりの丁寧な対応は、相手か自分より目上であることを示している。
途中壱矢の目が見開いて、なぜか私の方を凝視した。
私の顔を観て、相手と話をしている。
共通の知り合いかと思って首をかしげた時、壱矢が私の手をぎゅっと強く握りしめた。
「ちょっと待っていただけますか?今一緒にいるので確認します」
声の感じと雰囲気が、壱矢の緊張を物語っている。
壱矢と私の共通て、こんなふうに張り詰めた空気になることなんて一つしかない。
心臓が嫌な音を立てて脈を打ち始めた。
「壱?」
手を離し、私の肩を抱き寄せる。
落ち着かせるためなのか、幼い子をあやす仕草で私の背中を撫でていく。
「犯人らしき男が捕まった」
耳元に唇を寄せ、すごく落ち着いたトーンで告げられた事実に、全身が毛穴を膨らませるのか分かる。