好きとか愛とか
え……
ドクン───と一つ、皮膚を突き破る勢いで鼓動が跳ね上がった。
壱矢の態度と空気で、予感はさせられていた。
この件について何かあったのだと。
頭では分かっていても、ダメージを受けていた心は追い付いていなかった。
能天気に薄れていた記憶がよみがえり、体が震え始める。
それを壱矢がまた、優しく抱き締めた。
あの日から不思議と、壱矢にこうされても全く抵抗がないのは変わらない。
身構えていない時は学校の男子にもびくつくことがあり、恭吾さんでもまだふとしたときに反応してしまうというのに。
壱矢には全くない。
こうしていると、思い出してしまった怖さも薄らいでいく。
「被害者であるお前に面通ししてほしいって、今からなんだけど、どうする?壱は今のところ被害届出さないから断ってもいいし、面通しだけじゃ逮捕も出来ないから面通しそのものも意味薄いんで無理にとは言わないって。でも他の人の証拠固めに使えたらってことなんだけど、どうする?決めるのは壱」
私が決める…。
こんな重圧を受ける選択は、今まで経験したことがない。
壱矢の服を掴み、揺れる思いと対峙する。
「どっちにしてもそばにいる」
先輩、その言葉がどれだけ心強いか、あなた分かってますか?
選択肢を選ぶ間も急かさず、ただ私の返事を待ってくれた。
どっちを選んでも壱矢がついていてくれることが、どんなに私を奮い立たせただろう。
「わかりました。行きます」
「無理すんなよ?」
「いえ、大丈夫です」
決着をつけたい。
犯人の顔を確認して、私の日常に割って入ってくるような真似はもうさせない。
今日で葬り去ってやる。
ドクン───と一つ、皮膚を突き破る勢いで鼓動が跳ね上がった。
壱矢の態度と空気で、予感はさせられていた。
この件について何かあったのだと。
頭では分かっていても、ダメージを受けていた心は追い付いていなかった。
能天気に薄れていた記憶がよみがえり、体が震え始める。
それを壱矢がまた、優しく抱き締めた。
あの日から不思議と、壱矢にこうされても全く抵抗がないのは変わらない。
身構えていない時は学校の男子にもびくつくことがあり、恭吾さんでもまだふとしたときに反応してしまうというのに。
壱矢には全くない。
こうしていると、思い出してしまった怖さも薄らいでいく。
「被害者であるお前に面通ししてほしいって、今からなんだけど、どうする?壱は今のところ被害届出さないから断ってもいいし、面通しだけじゃ逮捕も出来ないから面通しそのものも意味薄いんで無理にとは言わないって。でも他の人の証拠固めに使えたらってことなんだけど、どうする?決めるのは壱」
私が決める…。
こんな重圧を受ける選択は、今まで経験したことがない。
壱矢の服を掴み、揺れる思いと対峙する。
「どっちにしてもそばにいる」
先輩、その言葉がどれだけ心強いか、あなた分かってますか?
選択肢を選ぶ間も急かさず、ただ私の返事を待ってくれた。
どっちを選んでも壱矢がついていてくれることが、どんなに私を奮い立たせただろう。
「わかりました。行きます」
「無理すんなよ?」
「いえ、大丈夫です」
決着をつけたい。
犯人の顔を確認して、私の日常に割って入ってくるような真似はもうさせない。
今日で葬り去ってやる。