好きとか愛とか
佐竹さんは私と距離を取って横に立ち、ミラーの向こうを見つめている。
「入ってくる」
いよいよ訪れる瞬間に、既に卒倒寸前。
心臓はばくばく鳴き、手には汗がびっしょり噴いて震えが止まらない。
思考なんかあるのか無いのか、ほとんど停止していた。
残っているのはただ、犯人を見定めるという意識のみ。
向こうのドアが開き、廊下の光と一緒にまず刑事さんが入ってくる。
そして──────
「……………っ!」
警察官に連れられて項垂れた姿で入ってきた一人の男性を見た瞬間、声になら無い声が飛び出すほど言い様の無い衝撃が私を襲った。
震えるというのがどういうことなのか、今までのはなんだったのかというほどに体か振動を始める。
襲われたときとは比べ物になら無い、体が激しく震えていた。
体が訴えてきた。
スウェットにボサボサの髪、逃げないように縄で縛られていて顔も俯いている犯人。
「あいつです」
低い声に、自分でも驚いた。
こんな声、出したことがない。
マジックミラー越しに指を指し、着座してすぐの犯人を睨み付ける。
「疑ってる訳じゃないけど、もう一度見て?間違いないかい?」
「間違えるはずありません。あいつです」
絶対間違えない。
無精髭が目立っていて、スーツをセンスよく着こなしたあの日とはまるで別人だが、別人じゃない。
どれだけ憔悴していようがあの時の鋭さが消えていようが、一度見れば断言できる。
「入ってくる」
いよいよ訪れる瞬間に、既に卒倒寸前。
心臓はばくばく鳴き、手には汗がびっしょり噴いて震えが止まらない。
思考なんかあるのか無いのか、ほとんど停止していた。
残っているのはただ、犯人を見定めるという意識のみ。
向こうのドアが開き、廊下の光と一緒にまず刑事さんが入ってくる。
そして──────
「……………っ!」
警察官に連れられて項垂れた姿で入ってきた一人の男性を見た瞬間、声になら無い声が飛び出すほど言い様の無い衝撃が私を襲った。
震えるというのがどういうことなのか、今までのはなんだったのかというほどに体か振動を始める。
襲われたときとは比べ物になら無い、体が激しく震えていた。
体が訴えてきた。
スウェットにボサボサの髪、逃げないように縄で縛られていて顔も俯いている犯人。
「あいつです」
低い声に、自分でも驚いた。
こんな声、出したことがない。
マジックミラー越しに指を指し、着座してすぐの犯人を睨み付ける。
「疑ってる訳じゃないけど、もう一度見て?間違いないかい?」
「間違えるはずありません。あいつです」
絶対間違えない。
無精髭が目立っていて、スーツをセンスよく着こなしたあの日とはまるで別人だが、別人じゃない。
どれだけ憔悴していようがあの時の鋭さが消えていようが、一度見れば断言できる。