好きとか愛とか
壱矢が私を特別な何かで見ているのではないかと、勘違いしてしまいそうになる。
期待してしまいそうになる。
期待して答えが違ったときの辛さと悲しさは、誰よりも分かっているつもりだ。
だから、そんな期待はしたくない。
なのに、壱矢が自分を特別だと思っていたら、嬉しいと感じていた。

そう感じる私はいったい、どう思っているのだろう。
安倍さんに相談したらきっと、それは恋だと言われるに違いない。
だけど分からない。
恋がどんなもので、どう心が反応するのか経験がないから分からないのだ。
もしかしたら、辛いときにそばにいてくれたり私という人間を理解しようとしてくれているから、特別だと勘違いしているだけかもしれない。
壱矢にだけ恐怖を感じないのも、説得力がある。

吊り橋効果とは違うけれど、作用する原理としてはきっと一緒だ。
壱矢が私に深く関わったとき、胸の中に何か落ちていくような感じがした。
今も、その落ちたものは胸の中で形を保っている。
追求するかどうかは私しだい。

あの時はそれが何なのか追求しようとも思わなかった。
けれど今は、それがモヤモヤしすぎて気もちが悪い。
深く掘り下げたいと思っている。

けれど、その一歩が踏み出せない。
もし望んだ結果にならなかったら?
望んだ結果っていったいなに?
私は何を望んでいるんだろう…?

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