好きとか愛とか
佐竹さん達も居心地が悪かったらしく、しばらくしてそそくさと退室してしまっていた。
私は当事者だし泣いていたし事情が事情だけど、付き合わされた壱矢は恥ずかしさの極みだっただろう。
もしかしたら、滞在時間は泣いていた時の割合の方が大きいかも知れない。

送り出されるときは佐竹さんが一緒で、あんなにわーわー泣いた私を誉めてくれた。
未成年の女性が一人で面通しするのは珍しく、とても立派だったと。
感動した、と。
でもそれは最後まで貫き通した女性にこそふさわしい言葉で、結局泣き崩れた私にはもったいなすぎる贈り物だった。
とはいえ、その気持ちはすごく嬉しかった。

しかしまぁ、
よく泣いた。
あれだけ泣いたのはいつぶりだろうか。
わーんわーんと、ほんとに情けない。

記憶を辿ってもすぐに思い出せないということは、ずいぶん昔だからだろう。
今も残る目の痛さと怠さは、事件の日に泣いたときと比べ物にならない。
窓に頭を預けていないと、重さでひっくり返ってしまう気さえする。

 「壱?気分悪い?」

肩に回されていた壱矢の指が顎を掬い、緩い力で持ち上げられる。
ずっと頭をもたせかけている私を気遣って、壱矢が顔色を窺ってきた。

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