好きとか愛とか
内装はふわふわなガーリーなのに、天井とのギャップがえぐい。
ウケ狙いなんだろうか。
私には響かないセンスではあった。

始めて入ったラブホはなかなか刺激的で、さっきまでキリキリしていた痛みなどすぐに忘れてしまう威力があった。
ジーーっと、電化製品の唸る音がクリアに聞こえるのは、二人無言だからだろうか。
空調も、空気の音さえ聞こえそうなほど二人でぼんやり寝転んでいた。

 「ごめんな、こんなとこで休ませて」

寝返りを打った壱矢が私の方を向き、枕を手繰り寄せて自分の頭へ敷いた。
私も寝返りを打ち、目の腫れなんかに構っている場合ではないと壱矢に向き直った。

 「いえ、私の方こそすみません。あんなことに付き合ってもらったあげくにラブホにまで…。先輩嫌でしたよね…。なのに本来ここに来る目的を果たせないなんて、本当に申し訳ないです」

 「意味分かっていってんの?」

 「はい、ここに来る目的なら大体────」

 「はいストップ。もういいから。ここは壱が考えてるようなことするだけじゃなくて、友達とかとも入ったりビジネスホテル代わりにすることもあるから全然大丈夫」

 「そうなんですか。そういうことをするためだと思ってました」

知らなかった。
そういう使い方をすることもあるのか。
ここイコールそれと決めつけていた誤りが、正しく上書きされた。

 「今日はうまくいってよかった」

壱矢の暖かい笑顔が向けられる。
そう、うまく行った。
犯人はつかまって、逮捕されてどうなるのかは分からないけどしばらくは普通に生活できる状態ではない。

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