好きとか愛とか
壱矢ももう、私の護衛みたいに登下校を一緒にしなくてもよくなった。

そう、
よくなったんだ。

女避けで付き合ってることにしてとか言っていたけど、今まで散々そういう対応をして慣れている壱矢に、偽の彼女なんか必要ない。
本当は必要なかったのに。
私が素直に送り迎えをさせなかったから、だから壱矢としては苦肉の策だった。

だから、終わりにしないといけない。

 「事件も解決しましたし、彼女役はもうおしまいですね」

いつまでも先輩を振り回す事はできず、私に気を遣う必要がないようにこれっきりで解消した方がいい。
先輩からは言わないだろうから、私から申し出ないと。
でも、止めると言おうとすると胸が苦しくて息もできない。
あの時間が終わってしまうと想像したら、思っていた以上の痛みを覚えた。

 「終わりにしたい?」

いつの間にか俯いていた顔が、壱矢の手で正面を向かされる。
てっきり終わりになると思っていた私は、状況が飲み込めずに壱矢を見つめた。

 「終わりにしたら、気付けないままかもしんないよ?」

私が鈍感で気付けなかった事。
多分それは、壱矢といるとずっと胸が高鳴ることと関係ある。

 「それは嫌です」

 「だったら離れんなよ」

壱矢はそれを知っているんだろうか。
でもこれは、また私側の要求になってしまう。 
壱矢はどうしたいんだろう。
壱矢には迷惑をかけ通しでなにも返せていないのに、これではまたおぶさりすぎなんじゃないだろうか。

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