好きとか愛とか
買ってもらったものを粗末にするなと、絶対慰めてはもらえなかったしそれが当たり前だ。
お金と男とは、こんなにも女を変えてしまうものなんだろうか。
母と二人で暮らしているときは、こんなわがまま絶対許されなかったのに。
悔しい。
こんなわがままを許されていることにではなく、わがままが許されている愛羅を敵視してしまうことが悔しかった。
「も、いいです。着ますから。もめないでください。私が着たら無駄にならないんでしょ?」
当初の予定を貫く事にする。
高校を出たら、こんなことおさらばだ。
後は偽の家族三人で、バカみたいなごっこ遊びをしていればいい。
私には関係ない。
後二年少しの辛抱だ。
主張を下げた私に、壱矢がどうしてだという疑問を投げてくる。
「壱、お前…」
「丸くおさめましょうよ、先輩」
というような言い争いがあって、今に至る。
私はこの、趣味に合わないごてごての浴衣を着る羽目になってしまった。
何て事だろう。
こんなの着て外に出るなんて、どんな見世物だ。
着るだけ着て、後は何だかんだ理由をつけて家に戻ることに決めた。
どうせ私がいてもいなくても、大差ない。
それに、一緒に出掛けたりしたら愛羅のわがままを目の当たりにして全然楽しめないだろうから。
愛羅の着付けが終わるのを横目に見ながら、風鈴がか細く鳴る和室に座ってそんなことをぼんやり考えた。
湿度の高い日本の夏は、年々過ごしにくさを増している。
風鈴の音を聴くだけで、わずかな涼しさを感じられた。
足首でレースのワンピースが風と遊び、先に結ってもらった髪の先が頬と戯れる。
こそばゆさに、自然と口元が綻んだ。
「あの、今いいですか?父さんが喜美子さん呼んでます」
開け放たれた襖の向こうで、軽くノックした壱矢が母を呼ぶ。
愛羅はともかく、私が裸だったらという警戒だろう。
お金と男とは、こんなにも女を変えてしまうものなんだろうか。
母と二人で暮らしているときは、こんなわがまま絶対許されなかったのに。
悔しい。
こんなわがままを許されていることにではなく、わがままが許されている愛羅を敵視してしまうことが悔しかった。
「も、いいです。着ますから。もめないでください。私が着たら無駄にならないんでしょ?」
当初の予定を貫く事にする。
高校を出たら、こんなことおさらばだ。
後は偽の家族三人で、バカみたいなごっこ遊びをしていればいい。
私には関係ない。
後二年少しの辛抱だ。
主張を下げた私に、壱矢がどうしてだという疑問を投げてくる。
「壱、お前…」
「丸くおさめましょうよ、先輩」
というような言い争いがあって、今に至る。
私はこの、趣味に合わないごてごての浴衣を着る羽目になってしまった。
何て事だろう。
こんなの着て外に出るなんて、どんな見世物だ。
着るだけ着て、後は何だかんだ理由をつけて家に戻ることに決めた。
どうせ私がいてもいなくても、大差ない。
それに、一緒に出掛けたりしたら愛羅のわがままを目の当たりにして全然楽しめないだろうから。
愛羅の着付けが終わるのを横目に見ながら、風鈴がか細く鳴る和室に座ってそんなことをぼんやり考えた。
湿度の高い日本の夏は、年々過ごしにくさを増している。
風鈴の音を聴くだけで、わずかな涼しさを感じられた。
足首でレースのワンピースが風と遊び、先に結ってもらった髪の先が頬と戯れる。
こそばゆさに、自然と口元が綻んだ。
「あの、今いいですか?父さんが喜美子さん呼んでます」
開け放たれた襖の向こうで、軽くノックした壱矢が母を呼ぶ。
愛羅はともかく、私が裸だったらという警戒だろう。