好きとか愛とか
前回は間仕切りされていたとはいえ、同席させられたのだから心中お察しするといったところだ。
母が手を止めて壱矢を出迎えると、その手を取って和室の奥へ連行した。
途中で私を認めて、何か言うでもなくただ視線を絡めて愛羅のもとへ。
そんな風に普通の態度だから、好きだと言われたことさえ私の勘違い説が色濃くなってくる。
確かめたくても術を知らない私は、壱矢がもう一度言ってくれるまで真実を知ることはないのだろう。
「ちょうどいいところに来てくれたわ。どう?愛羅ちゃんも似合うでしょう?可愛いお顔によく似合ってる」
「いえ全く。壱が着た方が品もあって美しかったです」
得意気に出てきた愛羅をほとんど見ることもなく、一瞬確認しただけの壱矢が即答でばっさり否定した。
なんて事を言うんだろう。
壱矢はどうしてそんなにいらいらしているのだろう。
いつまでも尾を引く人ではないし、自分のことでもないのに余りに不自然すぎる。
こんなにしつこいのは初めてかもしれない。
壱矢の苛立ちの原因を探っていた私を、ムカッ腹立てた愛羅の「なんなのよ!」が連れ戻した。
「お兄ちゃんしつこい!!いつまで言ってんのよ!!いいかげんにしてよ!」
癇癪を起こした愛羅が、壱矢の腕をポコポコ殴って怒りをぶつけている。
ただ殴られている壱矢には痛くも痒くもなく、ただただ呆れた顔で愛羅を見下ろしていた。
そこへ母が割って入り、愛羅を宥める流れまでがセットである。
「まぁまぁ、愛羅ちゃんほらほら怒らないで?ね?仕上げのかんざししましょう」
母の言うかんざしに嫌な予感がする。
この浴衣に着けるかんざしは一つしかなくて、この浴衣にはこれと決まっているかのようにいつもあのかんざしをもってきていた。
母が手を止めて壱矢を出迎えると、その手を取って和室の奥へ連行した。
途中で私を認めて、何か言うでもなくただ視線を絡めて愛羅のもとへ。
そんな風に普通の態度だから、好きだと言われたことさえ私の勘違い説が色濃くなってくる。
確かめたくても術を知らない私は、壱矢がもう一度言ってくれるまで真実を知ることはないのだろう。
「ちょうどいいところに来てくれたわ。どう?愛羅ちゃんも似合うでしょう?可愛いお顔によく似合ってる」
「いえ全く。壱が着た方が品もあって美しかったです」
得意気に出てきた愛羅をほとんど見ることもなく、一瞬確認しただけの壱矢が即答でばっさり否定した。
なんて事を言うんだろう。
壱矢はどうしてそんなにいらいらしているのだろう。
いつまでも尾を引く人ではないし、自分のことでもないのに余りに不自然すぎる。
こんなにしつこいのは初めてかもしれない。
壱矢の苛立ちの原因を探っていた私を、ムカッ腹立てた愛羅の「なんなのよ!」が連れ戻した。
「お兄ちゃんしつこい!!いつまで言ってんのよ!!いいかげんにしてよ!」
癇癪を起こした愛羅が、壱矢の腕をポコポコ殴って怒りをぶつけている。
ただ殴られている壱矢には痛くも痒くもなく、ただただ呆れた顔で愛羅を見下ろしていた。
そこへ母が割って入り、愛羅を宥める流れまでがセットである。
「まぁまぁ、愛羅ちゃんほらほら怒らないで?ね?仕上げのかんざししましょう」
母の言うかんざしに嫌な予感がする。
この浴衣に着けるかんざしは一つしかなくて、この浴衣にはこれと決まっているかのようにいつもあのかんざしをもってきていた。