好きとか愛とか

もしもそれを望んでくれるなら

 屋台が並ぶ道路沿い。
手を繋いだ壱矢と私は、あまり賑わっていない方の道を選んで歩いていた。
花火も屋台も盆踊りも一切興味は無く、ただ食事を探していた私たちはひっそりしているところの方が都合がいい。
あの三人が来てる事を考えると、奥の方へ行くのは得策ではなかった。

会場からうんと離れているから人の通りもあまり無くて私たちには好都合だが、ここに配置が決まった屋台の人たちの気持ちを考えると少々複雑だ。
稼ぎ時にこの離れでは、しょっぱい思いをしているだろう。
賑やかな声があまり届かないことが救いといえば救い。
もっと会場に近い離れだと、もっと騒がしい声と音が聞こえたに違いない。
ここには発電機の音が、主役急に存在を放っていた。

 「すみません、私財布持ってなくて…」

持っているのはかんざしのみ。
二人分の食料を持った壱矢がにっこり笑う。 

 「大丈夫。屋台と壱捜索用に親父からたんまりいただいたから」

私が逃げ出してから壱矢が家族にどう対応したのかは分からないけれど、私よりよほど冷静に先を考えていたらしい。
親である二人を責めるなんて事はしなかったとは思うけど、たんまりと言えるだけの額をふんだくるだけの理由は突きつけたのだろう。

 「ちなみに、壱が気にすることでもない。親父にもある程度の経緯話したから。愛羅を甘やかしすぎた結果こうなったって。だから甘えて貰っとけ」

今の台詞で、愛羅に対する父親の無責任に近い過保護について批難したことがうかがえた。
普段そんなことを言わない壱矢からの叱責を、恭吾さんがどんな面持ちで浮けたのか想像に難くない。
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