好きとか愛とか
私が帰りたくないなら、そのままどこかへ泊まらせて壱矢だけでも帰ってこいとの命だったのだろう。
兄妹だのなんだの言っても所詮は他人なのだから、一緒に一夜を明かすなんてとんでもないことだという主張だということは、考えるに当たって順当な道筋だ。
矛盾の中の無理ある理屈で笑えた。
「俺も帰んないよ。あんたら二人は愛羅がいりゃそれでいいだろ。じゃあな」
相手の返答も待たず、強制的に通話を終了させたあと、壱矢はスマホの電源を切った。
誰か友達から連絡が来るかもしれないのに、私との時間だけを優先してくれたことに、心が震えた。
「巻き込んでごめんなさい」
「離さないからって、言ったろ?」
そういうつもりで言ったわけじゃなかった。
あれは言葉のあやで、うまい言い方が思い付かなかっただけなのに、壱矢にはまるごと伝わっていた。
私もここで、一人で大丈夫だと言えるほど強ければよかったのだけど。
でも、弱いところを知られて壱矢に寄っかかってしまった私には、もう一人で乗りきるという選択肢は残っていなかった。
「とりあえず移動しようか。ホテルがいっぱいになっても困るし」
花火大会の日は、あちこちのホテルがいっぱいになってしまうのは常だ。
遠いところから来ている人などがホテルの予約もしているので、早くしないと空いているところも埋まってしまう。
帰るのも面倒だからと、ホテルに泊まる人もいるだろう。
兄妹だのなんだの言っても所詮は他人なのだから、一緒に一夜を明かすなんてとんでもないことだという主張だということは、考えるに当たって順当な道筋だ。
矛盾の中の無理ある理屈で笑えた。
「俺も帰んないよ。あんたら二人は愛羅がいりゃそれでいいだろ。じゃあな」
相手の返答も待たず、強制的に通話を終了させたあと、壱矢はスマホの電源を切った。
誰か友達から連絡が来るかもしれないのに、私との時間だけを優先してくれたことに、心が震えた。
「巻き込んでごめんなさい」
「離さないからって、言ったろ?」
そういうつもりで言ったわけじゃなかった。
あれは言葉のあやで、うまい言い方が思い付かなかっただけなのに、壱矢にはまるごと伝わっていた。
私もここで、一人で大丈夫だと言えるほど強ければよかったのだけど。
でも、弱いところを知られて壱矢に寄っかかってしまった私には、もう一人で乗りきるという選択肢は残っていなかった。
「とりあえず移動しようか。ホテルがいっぱいになっても困るし」
花火大会の日は、あちこちのホテルがいっぱいになってしまうのは常だ。
遠いところから来ている人などがホテルの予約もしているので、早くしないと空いているところも埋まってしまう。
帰るのも面倒だからと、ホテルに泊まる人もいるだろう。