好きとか愛とか
どうなることかと思った突撃は何だかんだで一応うまく行ったようだ。
壱矢も含めた先輩方に頭を下げ、安倍さんの待つ特進の方へ戻る。
が、少し行ったところで「壱」と声をかけられ、腕を軽く捕まれた。
確かめるまでもなく分かるその声に振り返ると、そこにはやはり壱矢がいた。
捕まれた腕をチラッと見ると、壱矢は罰が悪そうに私の腕を離した。

 「どうしてあんな?」

普段の私からは想像もつかない、そんな感じだった。
どうしてかなんて、私にだってはっきり分からない。
ただ、
ただ、
何かしたかった。
絶対に無理だと分かっていることならこんなことしたりはしない。
だったら、可能性を探る方がいいと思った。
誰にだって可能性はあるのだから。

 「可能性すら与えてもらえないなんて、理不尽だと思っただけです」

 「そっか」

 「あの…学校では、話しかけないで欲しいんですが」

 「あぁ、そうだったな。ごめん」

二人で話をしているこんな場面、いくらも人の目に入れたくない。
荻野先輩と安倍さん以上に接点のない私たちが、突然腕なんか掴まれて二人でいるところを見られたら変に思われてしまう。
だから、学校では超絶他人をお願いしていたのに。
私が友人をもてあそんでからかって、騙すとでも思ったのだろうか。

 「いえ、こちらこそ、すみません…」

でも多分違う。
どうだろう。

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