好きとか愛とか
駄々をこね、小さな子供同様な愛羅に親二人の視線が刺さる。
年よりずっと、言動と行動が幼いことくらいは理解してるのか、顔には憔悴が貼り付いていた。

 「愛羅、今は大切な話の途中だから、部屋へ行ってなさい。後で話そう、な?」

愛羅のそばへ移動した恭吾さんだが、無理に引き離すことはせず声をかけるだけ。
肩を擦って宥めている。

 「どうしてよ!なんで!?愛羅だってこの家の家族なのよっ!仲間はずれになんてさせないんだから!!」

 「仲間はずれにはしない。けど、そうやってただ大きな声を出すだけじゃなにも進まないだろう?」

 「そんなの知らない!いっちゃんが悪いんだもん!昨日だって愛羅のかんざし横取りしてっ、今度はお兄ちゃんとはキョーダイなのに恋人になんてなろうとしたからこんなことになったんじゃない!!いっちゃんのわがままなんて聞いてあげること無いでしょ!!?」

これほどまでに中身の無い主張がよくできたものだ。
ある意味感心してしまう。
結局悪者になるのは私ということだけ読み取れた。
私のわがまま…?

 「そんなだからお前とは話せねぇんだよ。あっちいってろ」

愛羅の暴走を見かねた壱矢が立ち上がり、私の手を取ってリビングを出ようとする。
ひき止める恭吾さんと母より早く、愛羅がかけよって壱矢の腰にしがみついた。
壱矢がそれを剥がし、しがみつこうと伸ばす手を掴んで離さない。

 「いやーーーーー!!!いっちゃんがどっかへ行っちゃえばいいじゃない!!言うこと聞いてくれないいっちゃんなんかもうお姉ちゃんじゃない!嫌いよ!」

私だって、嫌いだよ。
最初から好きじゃなかったよ。
今までどれだけ“いらないもの”をこうやって排除してきたんだろうか。
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