好きとか愛とか
そう思ったときには既に、行動に移すと決めてしまっていた。
となればさっさと準備をしなくては。
図書館の業務を終えてから、コンビニへ行って教師に気付かれないようここへ戻ってくる。
段取りは至極簡単で単純。
なんだろう、無謀だと思われたお泊まりだったが、遠足前の小学生の頃みたいでだんだんわくわくしてきた。

義理の家族の気配を感じずに過ごせる時間が待ち遠しくなった私は、逸る気持ちを抑えることが出来ずに教室を飛び出していた。
外に出て、進学棟と普通科棟の中間にある図書館へ向かう。
この図書館は両方の生徒が利用可能となっていて、進学も普通も関係なく解放されている。
しかし、主に使うのは進学棟の人間ばかりで、勉強ヲタクの雰囲気に耐えられないとばかりに普通科の生徒は余り利用しない。
市立の図書館などを利用する生徒がほとんどだった。

 「失礼します」

預かっていた鍵でドアを開け、館内に足を踏み入れる。
司書さんは帰っていて、図書委員の仕事がある日は閉館しているため、誰からの応答もない。
誰の気配もない。
勝手知ったるなんたらで玄関には入り、スリッパに履き替えた私は掃除道具一式を倉庫から引っ張り出して館内へ入る。
この瞬間の匂いが好きだ。

図書の香り。

古い本や新しい本、様々な歴史を持つ紙と印刷の匂いが館内一面を満たしている。
建物自体も古い木造で、少し埃っぽい匂いも混じっている。
大きな窓とステンドグラスは、異国の雰囲気も感じる。
ロフトのようになっている造りで、ソファはくつろいで本を読めるスペース。

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