好きとか愛とか
しかし絞った髪からはボタボタと水が滴り落ち、乾かすのには結構な時間を費やしそうだ
しかもドライヤーをかけても追い付かず、あちこちに散らせている。
全裸でなにやってんだ私。
下を見ると床にも落ちていて、明日の朝までに乾くかどうか不安になってきた。
床の水滴もある程度飛ばせた私は、おなじ下着を身に付けて体育着に袖を通した。

歯を磨き、教室へ戻る。
裸足にシューズというのもなんか妙な感じだ。
靴下一つないだけでシューズの中が踊ってしまい、ぺたぺたと音が出てしまう。
八時を回っているというのに暗くはなく、廊下に落ちる夜の光が足元を照らしてくれていた。

昼間とは違う装いの学校に、違う世界へ来た気持ちになった。
教室に入り、自分の席ではない一番後ろの席に座る。
誰だっけ、この席…。
クラスメイトの名前などどうでもいいから、ほとんど覚えていない。
顔と名前ももちろん、一致してない。

 「静か…」

机の上へかぶりつくみたいにもたれ掛かり、窓から空を見上げる。
どくんどくんと心地よいリズムで心臓が動き、それとは比例しない間隔で自分の呼吸が聞こえる。
遠くの方から車の気配は届くけれど、聞こえるのは自分の吐き出すものだけ。
世界に自分一人だけのような気がした。
本当はこんな気持ちになると怖いはずなのに、驚くほど無だった。


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