好きとか愛とか
人も少なく、誰ともほとんど出会わないというのに。
逞しい男の体の影に隠れるなんて、この私に起こるんだなぁとぼんやり思った。
視線の先には、擦りむいた膝が剥き出しになっている。
それほど大きな傷になっていなくてホッとした。
「あ、そうだ、今日の愛羅の迎えは委員会が延期になったってことにして俺が行ってきた。お前に無理言って変わってもらったってことにしてあるし、お前は図書館で勉強してそれを俺が迎えに行くって体になってるから、話し合わせろよ?」
気がかりなことが解決された。
そこまで根回ししてくれていたのか。
何かしら私の居心地がよくなる過程を用意してくれている気はしたが、完璧すぎて逆に癪に障った。
「分かりました。ありがとうございます。内心に響きませんか?」
「そんなもんに頼んないといけない奴に見えんの?」
「いえ、まったく」
でも無傷ではないだろう。
意図していなかったといっても、迷惑をかけてしまった。
無意識に壱矢の手をぎゅっと掴んでしまって、慌てて手を引っ込めた。
しかし壱矢がそれを許してくれなくて、離れる寸前にまた拘束される。
「心配いらない」
壱矢が言うと、本当に大丈夫な気がする。
なんでも出来る奴といった印象が強いのは、実際そうやって自分の力で勝ち取ってきたからだろう。
「電話、俺にかけてくれてよかったよ」
「消去法です」
事実だった。
そうするしかなかったのだ。
家にはかけられない、友達の番号も知らない、知っていても親に知らせられるから選択肢からは外れる。
となると、残るは唯一連絡先を知ってる壱矢しかなかった。
逞しい男の体の影に隠れるなんて、この私に起こるんだなぁとぼんやり思った。
視線の先には、擦りむいた膝が剥き出しになっている。
それほど大きな傷になっていなくてホッとした。
「あ、そうだ、今日の愛羅の迎えは委員会が延期になったってことにして俺が行ってきた。お前に無理言って変わってもらったってことにしてあるし、お前は図書館で勉強してそれを俺が迎えに行くって体になってるから、話し合わせろよ?」
気がかりなことが解決された。
そこまで根回ししてくれていたのか。
何かしら私の居心地がよくなる過程を用意してくれている気はしたが、完璧すぎて逆に癪に障った。
「分かりました。ありがとうございます。内心に響きませんか?」
「そんなもんに頼んないといけない奴に見えんの?」
「いえ、まったく」
でも無傷ではないだろう。
意図していなかったといっても、迷惑をかけてしまった。
無意識に壱矢の手をぎゅっと掴んでしまって、慌てて手を引っ込めた。
しかし壱矢がそれを許してくれなくて、離れる寸前にまた拘束される。
「心配いらない」
壱矢が言うと、本当に大丈夫な気がする。
なんでも出来る奴といった印象が強いのは、実際そうやって自分の力で勝ち取ってきたからだろう。
「電話、俺にかけてくれてよかったよ」
「消去法です」
事実だった。
そうするしかなかったのだ。
家にはかけられない、友達の番号も知らない、知っていても親に知らせられるから選択肢からは外れる。
となると、残るは唯一連絡先を知ってる壱矢しかなかった。