好きとか愛とか
私は弱くなんて無い。
弱い人間になってはいけない。
私は──────
黒い渦が押し寄せてくる。
何もかもを飲み込んで、私をも飲み飲んで、だったらもう飲み込まれてどうにでもなってしまえと意識を預けた瞬間、全ての力が抜けてしまった。
─────────────────
───────────
───────
額に何かが触れる。
ひんやりした、柔らかい何か。
ずっとそこにはなくて、掠めては通りすぎていく風みたいな。
心地よさに、ずっと感じていたくなる。
重い体がぴくんと弾むのを感じて、そのまま動かしてみるとなにかに柔くぶつかった。
うっすら目を開けて初めて、いままで目を閉じていたことに気付く。
「お、気がついた?」
目の前にいたのは部屋着をまとい、内輪で私を扇いでいる壱矢。
驚くより“なんで?”という気持ちの方が大きくて、反応が鈍ってしまう。
「……先輩…」
「湯中り」
「湯中り…?」
見慣れた天井。
だけど、覚えの無い家具や壁が目の前に広がっている。
ぼんやりした頭で這わせた視線の先には、私の部屋にはない男物のブレザーがかかっていた。
さっきまでかしてもらっていたブレザーで、ここが壱矢の部屋だと分かった。
すこし前までの記憶がない。
ということは状況を鑑みると、あれから私は風呂場で気を失っていたようだ。
そこを壱矢が───
壱矢が?
そこまで考えて、思い至る。
だったら私は、あの時。
弱い人間になってはいけない。
私は──────
黒い渦が押し寄せてくる。
何もかもを飲み込んで、私をも飲み飲んで、だったらもう飲み込まれてどうにでもなってしまえと意識を預けた瞬間、全ての力が抜けてしまった。
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───────
額に何かが触れる。
ひんやりした、柔らかい何か。
ずっとそこにはなくて、掠めては通りすぎていく風みたいな。
心地よさに、ずっと感じていたくなる。
重い体がぴくんと弾むのを感じて、そのまま動かしてみるとなにかに柔くぶつかった。
うっすら目を開けて初めて、いままで目を閉じていたことに気付く。
「お、気がついた?」
目の前にいたのは部屋着をまとい、内輪で私を扇いでいる壱矢。
驚くより“なんで?”という気持ちの方が大きくて、反応が鈍ってしまう。
「……先輩…」
「湯中り」
「湯中り…?」
見慣れた天井。
だけど、覚えの無い家具や壁が目の前に広がっている。
ぼんやりした頭で這わせた視線の先には、私の部屋にはない男物のブレザーがかかっていた。
さっきまでかしてもらっていたブレザーで、ここが壱矢の部屋だと分かった。
すこし前までの記憶がない。
ということは状況を鑑みると、あれから私は風呂場で気を失っていたようだ。
そこを壱矢が───
壱矢が?
そこまで考えて、思い至る。
だったら私は、あの時。