好きとか愛とか
続いて、やはり名前が分からないのでBさんCさんDさんEさんとなる。
ちょっとしたハーレムか。
そうしてBさんと目が合う。
そのまま私を上から下まで観察するみたいに一通り見てから、一定の場所で止まって眉を寄せた。
私と壱矢の手。
それからCさんとEさんに目配せして知らせ、三人揃って壱矢の腕をつついた。

 「ねぇ奥津君、なんで手ぇ繋いでんの?」

 「妹いたっけ?」

家族構成の話しはしていないのか、五人の女子生徒は妹の存在さえ知らされていない。
手を繋いでいたら彼女と間違われる心配をしていたが、妹?という話しになるならもうここは妹で通してもらいたかった。
普段義理の妹もごめんだといっているのに、状況に応じて立場を変える自分の現金さに嫌気がさした。
妹と間違われる可能性を考えていなかったのは痛恨だった。
壱矢を男と意識してしまった、完全なる私のミスである。
しかしもう、彼女のふりをして恩を返すと決まってしまった。
もう後には引けないから、覚悟を決めて立派に彼女役を演じてやる。

 「私は彼女です」

壱矢の手を強く握り、女子生徒に向けてはっきり言い放った。
後ろ暗くもなく怪しさもなく、堂々と主張したのだが、私以外の周りの様子がおかしい。
え、私なにか外した?
壱矢を見ると、驚いた顔で私を見下ろしている。
ポカンと口を開けて。
それは他の人も一緒で、面食らった顔で私を見ていた。

 「「「「「………………………え?」」」」」

そしてたっぷり時間を取った後、女子五人がハーモニー的シンクロで疑問符を投げ掛けてきた。

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