好きとか愛とか
全ての質問には二人だけの秘密です、と答えはしたが、お高く止まった女という印象しか与えなかっただろう。
私はどう思われても構わないけれど、壱矢のイメージがこんな女と付き合う趣味の悪い男と称されてしまうことには少し抵抗を覚えた。

自分で行動した結果ならまだしも、自分ではどうにも出来ないことで得てしまった不名誉に関しては、消化するのに時間もかかるだろう。
自分の不甲斐なさに腹が立つ。
こんな私を選んだ壱矢の選択ミスであるにしても、それだけで片付けるには説得力が薄すぎた。

 「付き合うふりって、こんなに疲れるの…」

嘘の吐きすぎ、黙秘の通しすぎ、圧力の受けすぎ三重奏でくたくたになった私は、壱矢の待つ場所へとふらふらになりながら歩いていた。
時間の打ち合わせはしていない。
だいたい最後の最後まで残っている事が多いので、壱矢も目星をつけて迎えに来ていた。
何度か続ければ、時間も読めるようになってくる。
今日もそろそろ────

 「いいじゃん壱矢ぁ、いこーよー」

待ち合わせ場所として使っている方から声がして、そこに目を向けると、壱矢が女子生徒に腕を組まれて絡まれていた。
今朝見た女子とはまた違う、少し派手めで制服も改造しているやんちゃなタイプだ。

 「行かねぇよ、俺彼女待ってるから」

腕を振り払うでもなく、好きにさせたままで「お前ら帰れよ」と言っている。
なんだか、いい気がしない。
彼女を待ってるなら、腕なんか組ませないで欲しい、とか思ってしまって、なにを欲な事を言っているんだと慌てて取り消した。
ここは彼女(ふり)としては出撃すべきところなんだろうか。
けれど出ていくタイミングが測れない。

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