大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
2. 恋の手助け


 私、矢島 美優は朝から憂鬱だった。


「ねえ優介、一緒に学校いこうよ~」


 自宅の前で制服を着崩した茶髪の女子高生が立っている。

 短いスカートに素足、胸元まで開いたブラウスで目のやりばに困るほど。

 話しかたも語尾を伸ばす、私が苦手な今時の女の子。


 私より一歳年下の弟、矢島 優介が目当で家の前に待ち伏せしてるのは明白だ。

 濃いメイクの顔で視線を向け、背中を丸めた脱力姿勢で手を振ってくる。


 弟の優介は、あまり気にしてない様子。


「なんだよ、朝から騒がしい奴だな」


「ええっ、沙也香うるさくしてないしぃ~」


 これでも弟と同級生の幼なじみなんだから困ってしまう。

 小学生のころは明るくて活発的な普通の女の子だったのに、中学生でなぜか派手な格好に目覚め、そのまま高校生に。

 毎日遅刻もしないで律儀に顔を見せる姿勢はほめてもいいけど、弟の優介が目当てなのよね。


「お姉ちゃん、相変わらず清楚な見た目ですねぇ~」


 笑顔でヘラヘラしながら言ってくるから、ムカッときたけど本人には言えない。

 私の外見は長くて艶やかな黒髪に細身の体形、制服も整えてスカートも膝丈なので見た目は普通の女子高生なのだから。


 溜息を吐いて肩を落とし、朝から憂鬱な気分で言う。



「私はアナタの姉じゃないのだけど……」



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