大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
優介の言葉を耳に、背を向ける私は家を飛び出す。
何を言おうとしてたのか気になるけど、それどころじゃない。
私は、あの場所から一刻も早く逃げ出したかった。
「優介……」
薄暗い路地を、私は一人で歩いてる。
重い荷物を背負う姿は、家出少女に見られてしまうだろう。
「いそがないと……」
私には向かう当てがあった。
学校が終わった放課後、毎日のように通ってる場所。
あそこに行けば、なんとかなるはず……
大きな一軒家の前で、私は歩みを止める。
インターホンを目前に、ボタンを押してチャイムを鳴らす。
少し間を置いて、スピーカーから聞き慣れた声で返事があった。
すぐに私も、申し訳なさそうな声で話しかける。
「夜分にすいません……」
一呼吸置いて覚悟を決め、私は口を開く。
「先生、私を家に泊めてください……」