大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
「先生、すごくおいしいです」
笑顔を見せる私を見て、先生も胸を撫で下ろしてるに違いない。
あまり喜怒哀楽が無く、顔の表情が変わらないけどきっとそうだろう。
カフェオレを飲む姿を見つめてくる先生に、私は話しかける。
「何も聞かないんですね……」
「美優くんは、面白いことを言うんだね」
「私が面白いことを、ですか……」
口を開いた先生が、私に向かって面白いという。
たくさん泣いて顔は腫れ、学校の制服姿のまま夜遅い時間に押し掛けた女子高生が面白いの?
「ついさっきまで、僕と美優くんは一緒だったじゃないか」
「そう言われれば、おっしゃるとおりです……」
学校帰り、放課後は先生の所に寄る事が多いけど、最近は毎日のように足を向けてる。
帰宅して一時間ぐらいしかたってないのに、こんな姿で戻ってきたら先生じゃなくても頭を傾げてしまう。
両親が転勤で家を長期不在にしてることは先生も知っている。
弟と二人で生活しながら学校に通ってることも報告済み。
姉弟の口喧嘩で家を飛び出してきたのだろうと、言わなくても見破られてるような雰囲気。
気心の知れた先生でも、姉の私が弟に告白して振られたとまでは予想できてないはず。
傷心で先生の所に泣きついてきたなんて、絶対に言えないよ……