大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
月明かりに照らされながら演奏する私。
その横に人の気配を感じた。
「先生……」
防音の広い室内に二台並んだグランドピアノ、幼少の時から先生は私の横で指導していた。
普段、物静かで優しい先生も、ピアノを生徒に指導するときは真剣で厳しい。
何度も泣かされ、怒られながら練習してきた。
先生は、お母さんと同じ歳でお父さんと歳が近いのに若く見える。
さすが現役のピアニスト、外見もカッコイイので演奏姿は見惚れてしまう。
「先生……」
私は演奏の手を止め、立ち上がって思わず抱きしめた。
年の差なんて関係ない、私は先生が大好き。
先生の胸に顔を埋めると、心が満たされていくよ……
でも先生は、私の頭に右手をポンポンと乗せるだけ。
やっぱり子ども扱い、そして大人の対応……
直前の曲変更、先生に迷惑をかけてしまった。
思わず感情的になって抱きついたけど、私は冷静になって先生から体を離し椅子に座る。
優しい笑顔を見せた先生は、隣の椅子に座って指先を鍵盤へ。
隣で実演しながら、先生は熱心に指導してくれた。
午後十時を過ぎても、私は演奏し続ける。
一週間後のコンクールをめざして……