大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
5. 淡い色彩を帯びていく音色


 本番前日の土曜日、私は無事に予選を通過。


 あの夜、家を飛び出してから一度も帰宅してない。

 先生の家から学校に通い、毎晩、練習に明け暮れていた。

 優介も気まずいのか、何も言ってこないし連絡さえしてこない。


 沙也香が私の教室に姿を見せたけど、スマホを手渡してすぐに帰ってしまう。

 何となく険悪な雰囲気を察知して、言葉少なく姿を消す。

 チャラチャラした外見に似合わない要領のいい子だ。


 スマホを見ると、私の予選結果を気に掛けていたクラスメイトや同級生から連絡がたくさんきてる。

 クラシック音楽の知識は無くても、私が予選を通過しただけで、いつも大喜びのメッセージをくれる。


 本番の日は、会場まで応援にきてくれる友人もいる。

 優介と沙也香は……姿をみせないだろう。



 あんなことがあったばかりで、気まずいだろうし……



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