大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
廊下やホールにいた人たちが会場に入りはじめた。
ステージ袖から覗き見ると、座席に座るクラスメイトの女の子と目が合ってしまう。
みんな私に向かって手をふってる。
私も笑顔で手を振り返すけど、本当はそんな心境じゃない。
緊張で胸が張り裂けそうだ。
優介と沙也香を探してみるけど。
「いない……」
まだ会場に姿を見せてない。
というか、二人とも来ないだろう。
後半に演奏する私は時間に余裕があるけど、他の演奏者の曲は聴かないようにしてる。
ミスタッチを聞いたら、自分までそのリズムに引きずられるからだ。
第一演奏者のピアノ演奏が聞こえてきた。
どうやら始まったらしい。
早いテンポの派手な楽曲、でもすぐにミスタッチ。
リズムを崩してバラバラ、そして、演奏を途中で止めてしまった。
思わず聞いてしまったけど、耳の奥に残ってしまう。
最悪だ……