大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜


 演奏を止めてしまったら失格も同然、弾き直しても結果は出ない。

 胸のドキドキが止まらない、緊張でどうにかなりうそう。


「矢島さん涼しい顔してるね、緊張しないの?」


「そんなことないわよ」


「さすが去年の準優勝者、頑張ってね」


「お互い最善を尽くしましょう」


 去年の最優秀ピアニストの子が嫌みったらしく言ってきた。

 私と同じ歳の女子高生なのに、一年と二年の時に最優秀賞を取っている。


 おかげで私は二回とも準優勝。


 当時、年上だった演奏者を押しのけて切磋琢磨してきたライバル関係。

 彼女に勝たないと、上には進めない。


 派手な超絶技巧の演奏で、他を圧倒し観客を引きつける技術は圧巻の一言。

 弟の優介もスゴイと驚くほど。



 だから彼女を見るだけで、嫉妬の炎メラメラしちゃう。



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