大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜


 最終演奏者、矢島 美優さんです


 会場のアナウンスで名前が呼ばれた。

 ステージ袖に待機していた私は、深呼吸をして気持ちを整える。


 大きな拍手を耳にしながら、ステージ中央に向かってゆっくりと歩き進む。

 ステージマナーと立ち姿も審査されるので、私は背筋を正して歩く。


 立ち止まった場所はステージ中央、客席に向かって礼を終え顔を上げた。

 最前列にクラスメイトや同級生の子たちがたくさん座ってる。

 視線を合わせて小さく頷いて見せると、無言で小さく手を振ったり笑顔で反応してくれた。


 みんな私と同じ三年生、高校生活も残り少ない。

 日曜日の貴重な時間をつかって、応援ありがとう。

 心を込めて演奏させてもらうよ。


 さすがに優介の姿はない。

 派手な格好の沙也香が一緒にいれば、すぐに見つけることができるんだけど……


 先生の姿も視界に入った。

 審査員席の後ろで、静かに私を見つめてる。


「これは……」



 小声で呟いてしまうほど、審査員席を見て驚いた。



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