大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜


 家を出てく時に一言ぐらい声をかけてほしかった。

 私も優介に何も言わないで外出するから、お互い様かな。


「疲れたな母さん」


「本当ね……」


 リビングの長椅子に腰を下ろした両親は、ぐったりと疲労困憊の様子。

 体を休める両親を目前に、私と優介は口を閉じてお互いに視線も合わせようとしない。


 私が告白した後の険悪な雰囲気ではないけど、ちょっとぎこちない。

 顔を合わせづらいというか、恥ずかしいとは違う不思議な感覚。


 そんな姉弟の様子を見ても、両親はさほど気にしてない。


 その時、チャイムが鳴った。


「おっ、タクシーが来たぞ」


 家族そろって移動するため、父が頼んであったらしい。

 そのまま家族四人でタクシーに乗り込み、個室のあるレストランへ向かった。



 レストランに到着した優介は家族そろっての食事に、あまり乗り気でなさそう。

 店内に入っても、渋々だけど文句を言わずに案内された個室の椅子へ腰を下ろした。

 私も店員さんに誘導された場所の椅子に座る。


 家族でテーブルを囲んで座る姿は久しぶり。


 私の目前には母、斜め向かいの父と対座する。

 弟の優介は私の右隣、家で食事をする時のいつもの風景。



 すごく久しぶりで、何だか恥ずかしい……



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