大好きな先生と、月明かりが差し込む部屋で過ごした夜
「俺と美優、お互いの名前に『優』が付いてるけど……これって、姉と弟で仲良く過ごせとか、意味でもあるのか?」
優介が静かに口を開き、私に視線を向けないまま話し始める。
幼少の頃も、今も、私は名前のことなんて気にしていないで生きてきた。
物心が付いてから、親しんできた名前に疑問なんて持たなかったし、姉と弟なんだから不自然なことなんて何もない。
でも、意味があるんだったら知りたいとは思う。
「偶然よ……」
食卓テーブルを挟み、目前に座る母が静かに口を開いた。
「今、話すのか……」
父も箸を置き、食事を止めて難しい顔をしてる。
「こんなふううに、家族みんなで集まることって……この先あるのかなって考えたら……」
心苦しい気持ちと格闘する、母の思いが言葉から伝わってくる。
私がこの町を離れる前に、言っておきたいことなのだろう。
ちょっと不安だけど、名前に由来が関係してるのかしら。
「俺と美優は大人だぜ、ちゃんと受け止める」
優介も箸を置き、母を見つめながら言った。
「美優はどうなの……」
「私も……この町を出る前に、知っておきたいな……」